かけがえのないキミへ


音が重なる度、緊張が増すのは俺だけかな。
ちらりと梨花を見ると、梨花は鏡で自分の顔を見ていた。
それを見たとき、また胸の奥が痛くなる。


電話からは一向に竜也の声が聞こえないでいた。一旦耳から携帯を離す。

『寝てんのかな?』


携帯を見つめ、首を傾げた。


『寝てるのかもね?』


梨花の言葉で納得しようとしている自分がいた。寝てる?竜也が?
確かに有り得るかもしれないが、もう9時になろうとしてるんだぞ?


すると突然、手に持っていた携帯が震えだした。それと同時に体が反応する。

待ち受け画面に映し出された《竜也》という文字。
その文字を見た俺は、どこかでホッとしていた。

『あ、竜也?お前学校は?』


『…行かない。行きたい気分じゃねぇ…』


電話越しから聞こえてきた竜也の声は、綾音にキスを拒まれたときより、遥かに沈んでいた。



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