共に行く者
…確かに考一はちょっと引っ込み思案だった。

いっつもいろいろ考え過ぎて、身動きが取れなくなってしまう。

そういう時はムリにでも笑わせて、スッキリさせてやる。

そうすれば、明るく笑ってくれるから…。

でも今は微笑む程度。

かなり利実のことで参っているな。

確かに利実のことは考一がキッカケとなったが、こうなってしまったのはコイツだけのせいじゃない。

「…まっ、利実には悪いが、何を言われても聞くなよ? 特にお前は頼られたら弱いタイプだから心配だ」

「大丈夫、さすがに僕も頭に来ているから。でもゴメン。引導渡す役、本当は僕がやるべきだったのに」

利実に電話をかける役目は、最初は孝一が名乗り出た。

しかし孝一は優し過ぎる為に、仲間から却下されてしまった。

そして口が悪く、一度決めたら決して譲らない頑固者に、矛先が向いたのだ。

「別にいいさ。オレみたいなタイプに言われたら、さすがの利実も黙るからな。だから何か言われたら、オレに言えよ?」

「はいはい、頼りにしているよ。和城」

孝一が浮かべた微笑は、安堵の表情だった。

だからオレもほっとした。
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