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そう言われて気付いた。

“さゆりちゃん”たちは、してるか、していないか、わからないくらいの薄い化粧をしていた。



「あ…今日、寝坊しちゃって。」

とりあえず、その場しのぎの言い訳をした。


「そうなんだ。珍しい。
だから髪も整えただけって感じなんだね。」

菅崎さんがそう言った。

「けどさゆりは、スッピンでもいけるから良いよねー。
あたしスッピンで外出らんない。」

三上さんがそう言って笑う。


この調子じゃ、いつもオシャレで可愛い“さゆりちゃん”でないことが、すぐにバレてしまう。

バレたらいけない、ということでもないのだろうが。



「あ、三枝さんだよ。」

突然出てきた、自分の本来の名前に、身体が固くなる。
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