ラスト・ラン 〜僕らの光〜
澄み切った真っ青な空の中、ヘッドフォンから流れる爆音と共に斗真は駆け出した。

世の中の不条理を語る詩は今の自分にぴったりの曲で、気分は最高潮になり自然とスピードが上がる。

朝早くに登校して誰もいないグラウンドをひたすらに走るのが斗真の日課だ。

斗真は昔から走ることは好きだった。

走っている時だけ、全てのことを忘れられるからだ。

嫌なことも全て。何もかも。




何周か走った後、斗真は休憩がてら隅のベンチに腰掛けた。

ペットボトルのミネラルウォーターを飲み干し、ヘッドフォンを外す。

辺りは静かで、どこかで水が滴り落ちる音だけが聞こえる。昨日の雨でできた水溜まりでシューズが泥にまみれていたが、たいして気にも留めなかった。

うん、と背伸びをして、ベンチに寝転がる。

暖かい日差しが眠りを誘いうとうとしかけた頃、突然大きな声がグラウンドに響いた。


「三浦斗真ーーっ」


朝っぱらから斗真のフルネームを叫ぶ男はただ一人しかいない。

斗真はあからさまに表情を歪ませ、そのまま振り返らず学校に行く準備を始めた。

そして、そそくさとその場を離れようとするが、軽快な足取りでその男はやってきた。
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