桜の中で
 翌日の昼。
「さぁ、白状しな!半年以上彼氏のこと、隠してたんだからね」
タコさんウィンナーが刺さった箸を私に向ける、親友のナオ。
 本当はもっと友達はいるんだけど、席的に動くのが面倒で二人でお弁当を食べている。
 わかった。正直に言うよ。
 ただ、私は群れるのが嫌いなだけ。だからって、省かれてるわけでもないし、みんなが嫌いなわけじゃない。誤解しないでよ。
 私こと小桜ユイは、高校2年生。本当は成績とか将来のこととか就活とか、いろいろ大変。恋愛なんかに現を抜かしている暇なんてないけれど、出会ってしまったら仕方ないでしょ。
「別に隠していたわけじゃないよ。ただ聞かれなかったから、言わなかっただけ」
「聞かれなくても、言うのがフツー」
誰か~、この子のマニュアルちょ~だい!!
 私はそう叫びそうになった。実際、最初のあたりは出かかっていた。
「とっとと、真実を吐け!」
まるで尋問を受けてる、犯人みたい。
 と言うことは、ナオが刑事さん?うわ、似合わない。
 私は自分が勝手に想像してしまったことに、吹き出した。
「笑って誤魔化すんじゃない!」
「そうゆう、わけじゃ」
さすがに笑いすぎて、お腹が痛い。息も辛いし、笑うのを止めたいんだけど、いちいちナオがする行動が、想像で刑事の姿に見えてしまう。
「もう怒った!せっかく、杏仁豆腐買ってきてあげたのに…、あげない!」
そう言うと、ナオはそそくさと弁当をしまいだした。その時、鞄に私の大好きな杏仁豆腐がチラリと見えた。
 私は物欲に走った。
「話すから!全部、包み隠さず話すから、杏仁ちょうだい!」
別に隠すつもりなんて、最初から無いんだし。それで杏仁豆腐が貰えるなら、こっちが得だし。
 と、私はテンションが上がる。
 先払いで貰った杏仁豆腐の、重さ、冷たさ、匂い、味。私は、それらを噛みしめながら、タクとの出会いを思い出す。
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