楔
「それは、桜舞い散る春の駅」
まだ春休みに入ったばっかりの頃。それは、まだ高校に上がる前の、高校生と中学生の中間の時。写真を撮りに、駅へ行ったときのことだった。
その駅の近くには桜の木があって、この時期になると花を咲かせる。
舞った花びらが駅に降り注いで、とても綺麗。
私はこの風景が大好きで、用も無いのに駅に来ては、ベンチに座って何時間も眺めている。
この風景の為に、私はこの街を出ないで一生を暮らそうと思っていた。
毎年、舞い始めたら一目散に来て写真を撮る。もう、恒例行事になっている。
その日は日が昇る前に来ては、一日中ベンチに座り込んで夜が更けるまで、シャッターチャンスを狙う。
寂れて汚いこの駅に一日中いる私を、最初の頃はみんな、物珍しく、変なものを見るような目で見ていた。
でも、今では慣れてくれたようだった。私も慣れて、人の目を気にしない子に育った。
この日も、朝一に来ては朝焼けを撮った。まばゆい、優しい温かい光に染まりながら、はらはら宙を舞う花びら。
最初見たときは、あまりにも綺麗すぎて、涙が溢れたものだ。今でも、目が潤む。
人混みの間を縫いながら飛んでいる花びらもまた、綺麗だった。
実は、この桜の木を見たことがない。花びらは駅で幾度となく見ていたが、桜の木は一度も…。場所さえも知らないでいた。
特に理由は無かったが、何となく桜の木を見つけてしまいたくなかった。
昼間の人混みの写真を撮ろうとしたときだった。
人混みの中に、周りとは違う動きしている人影があるのに気がついた。
電車はとっくに出て行ってしまって、しばらくは来ない。都会の近くにあるというのに、このありさまの田舎。
次を待ってるにはさすがに早すぎるし、駅から出て行くわけでもない。
人混みが少なくなっていく。彼の姿が見えるようになっていく。
若い男性。私と同じぐらいかな?
ファッションが、この辺ではあまり見ないおしゃれ度の高さだから、都会の方の人間だろう。
電車がすぐまた来るとでも思っているのだろうか?
それとも、待ち人がいないだけだろうか?
まだ春休みに入ったばっかりの頃。それは、まだ高校に上がる前の、高校生と中学生の中間の時。写真を撮りに、駅へ行ったときのことだった。
その駅の近くには桜の木があって、この時期になると花を咲かせる。
舞った花びらが駅に降り注いで、とても綺麗。
私はこの風景が大好きで、用も無いのに駅に来ては、ベンチに座って何時間も眺めている。
この風景の為に、私はこの街を出ないで一生を暮らそうと思っていた。
毎年、舞い始めたら一目散に来て写真を撮る。もう、恒例行事になっている。
その日は日が昇る前に来ては、一日中ベンチに座り込んで夜が更けるまで、シャッターチャンスを狙う。
寂れて汚いこの駅に一日中いる私を、最初の頃はみんな、物珍しく、変なものを見るような目で見ていた。
でも、今では慣れてくれたようだった。私も慣れて、人の目を気にしない子に育った。
この日も、朝一に来ては朝焼けを撮った。まばゆい、優しい温かい光に染まりながら、はらはら宙を舞う花びら。
最初見たときは、あまりにも綺麗すぎて、涙が溢れたものだ。今でも、目が潤む。
人混みの間を縫いながら飛んでいる花びらもまた、綺麗だった。
実は、この桜の木を見たことがない。花びらは駅で幾度となく見ていたが、桜の木は一度も…。場所さえも知らないでいた。
特に理由は無かったが、何となく桜の木を見つけてしまいたくなかった。
昼間の人混みの写真を撮ろうとしたときだった。
人混みの中に、周りとは違う動きしている人影があるのに気がついた。
電車はとっくに出て行ってしまって、しばらくは来ない。都会の近くにあるというのに、このありさまの田舎。
次を待ってるにはさすがに早すぎるし、駅から出て行くわけでもない。
人混みが少なくなっていく。彼の姿が見えるようになっていく。
若い男性。私と同じぐらいかな?
ファッションが、この辺ではあまり見ないおしゃれ度の高さだから、都会の方の人間だろう。
電車がすぐまた来るとでも思っているのだろうか?
それとも、待ち人がいないだけだろうか?