月と太陽の事件簿14/隙間女の視線
その時です。

また首筋にちくちくしたものを感じたんです。

それは明らかに『視線』でした。

あたしは押し入れの、向かって左側にいたんですが、その視線は右側から感じました。

あたしの背筋に冷たいものが走りました。

気付くと、全身は汗でびっしょりでした。

絶対『誰か』がいる!

見たくない!

でも『誰か』はこっちを見ている!

見たい!?

見なきゃいけない!!?

あたしは短い間で何度も自問自答をくり返しました。

が、意を決して右側を見ました。

そこには確かに『誰か』がいました。

髪は長く、碧い瞳が印象的な美しい女でした。

でもその女がいたのは襖と襖の間…。

そうです、厚さ数ミリもない狭い隙間です…。

常識で考えれば、そんな所に人がいるはずありません。

しかしその闇の中に、確かに女はいました。

その碧い瞳であたしを見ていました…。


口もとに、うっすらと笑みを浮かべながら…!

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