月と太陽の事件簿14/隙間女の視線
多少物騒な話をしても大丈夫な時間帯だ。

「たしか画廊の主人が怪我をしたんだよな」

「犯人に切りつけられたのよ」

事件が起きたのは昨夜9時すぎ。

50代の画廊の主人が閉店の準備をしていると、手袋をつけたマスク姿の男が、突然店内に押し入ってきた。

男は画廊の主人にナイフを突き付けると、現金を要求した。

主人は現金は置いてないと首を降ったが、男はいいから出せと聞き入れる様子はなかった。

出せ、出さないと押し問答を繰り返すうちに男は苛立ってきたらしく、不意に手にしていたナイフを振るった。

腕を切り付けられた主人がひるんだ隙に男は近くにあった一枚の絵を額ごと壁からもぎ取ると、そのまま店外へ逃走した。

「容疑者の目星はついているのか」

達郎の問いかけにあたしはうなずいた。

「店内の防犯カメラに男の顔が映っててね」

それにより男の身許はわれた。

「容疑者の名前は泉田浩(38)。強盗や傷害の前科があるわ」

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