合縁奇縁~それでも愛は勝つ
息せき切って駆け込んだ喫茶店の、カウンターに坂本弁護士は座って待っていた。
「美樹さん、そんなに急がなくても僕は逃げたりしませんよ。
これでも気は長い方なんです」
すっかり汗ばんだあたしを涼しい顔で見つめ、彼は余裕でそう呟いた。
「約束の時間に遅れるのが嫌なだけです!」
滲んだ汗を取り出したハンカチで拭い、あたしは少しムッとしていた。
ランチにあたしを呼びつけたのは彼の方なのだ。
「少し休みますか?
それとも行きますか?」
「だ、大丈夫ですっ!
これ位、いつものことですから」
いや、全く、色気も何もあったものじゃない、自分でも呆れるけど。
彼はいつに無く、ビシッと決めたスーツ姿で、心なしかカッコいい。
対するあたしは、いつもの出勤スタイルで、黒のパンツスーツに白いシャツ。
だって……
ランチに出かけるような、お洒落な服はもともと持ってない……
こんな慣れない状況に追い込んだ彼を睨んだ。