合縁奇縁~それでも愛は勝つ
それはある秋のことだった。
「天野美樹さんですね」
アパートの前で、埃まみれのリュックを背負った髭面の男性に声を掛けられた。
「はい?」
「僕は山村聡。村井太一君の共同通信社時代の同僚です」
「太一の?」
「お話があるのですが、少しお時間よろしいですか?
さきほど、ご子息が戻られたようでした。
雄太くん、でしたか……」
「あ、はい。じゃ、どうぞ、狭いところですが、お上がりになって下さい」
あたしは雄太の名前を口にした彼を信用し、家に上げた。