in the dark†短編†
「…こ、心残りがあるんだ」

びくびくしながら答えると

「心残り、ね」

シュウはふっと溜息をついて、腕を組んだ。

「死んで心残りのない人間の方が少ないんじゃないの?
そんなもの、いちいち聞いてたらキリないんだけど?」

ニヤニヤして、私のおでこを指で跳ねる。

なんか、この人意地悪だ。

私は額を押さえて、頬を膨らませた。

「だってこんなにいきなり死ぬなんて思ってなかったんだもん!
一日!一日でいいから待って?」

「……なにがしたいか知らないけど。
お前生き返ったところで、多分瀕死状態だぜ?
一日ぐらい猶予があっても、やり残したことやるなんて無理じゃないの?」

「一言話せたらいいの……どうしても言わなきゃいけないことがあるの」

「俺にそんなこと頼まれてもねー」

シュウが首の後ろを押さえて、顔をしかめる。


「じゃあ行かない」

私は、シュウから後ずさって距離をとった。
< 9 / 60 >

この作品をシェア

pagetop