いつか、桜の下で…



「小娘ごときが、死ににきたのか」


私の目を見て、再び刀を構える。


死んでもいい…お兄ちゃんの仇が伐てるなら!!!


そう思っても、真剣の重たさは竹刀と比べられない程だった。


一振りすることでも、よろけてしまう程に。


それでも、憎しみには勝てなかった。


どんなに重たくても、相手の心臓を貫こうとした。


「うわぁああぁぁ!!!!!!」


走り込んだ私の気迫に、たじろった相手。

『いい、香織。竹刀と言えど、刀を持った時は、隙を見せてはいけないんだよ』


お兄ちゃんの言葉が頭を遮る。


心臓は、貫いた。


そしてまた、赤が広がる。



…それからのことは、よく覚えていなくて、ただ、お兄ちゃんと父様、母様のお墓を作って。


供えるものが何もなかったから、お兄ちゃんのお墓に刀を供えた。


その時、決めたの。


幕府側の人間を全員、あの赤の中に引きずり落そう…って。




壬生浪士組…そこから、始めよう。


そう思って、入隊を希望した――…。





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