魔王に捧げる物語
「わたしの人生はあなたに捧げるわ。
物語は幸せな終わりでしょう………?」
迷いなんてないよ。
だから最期だなんて言わないで。
涙を堪えながら、震える唇に力を込める。
「好き、誰より愛してるわ!
きっと生まれ変わってもニルと恋する。
いつまでも待っているから………」
帰ってきて………。
声にならない吐息が漏れた。
彼が好きな笑顔で見送りたい。
帰ってきたいと思う女になりたいんだ。
消えかけた腕に力がこもり、羽がはらはらと舞う。
ニルは穏やかな顔だった。
「城に送るよ……。
消えても会いにいく、守るよ。ずっと……。
泣かないでね………?
消える事は死じゃないから。魔王の存在しない世界はきっとずっと未来だから……」
世界に魔力がある限り、
世界が魔王を求める限り、
彼女が求める限り……。
その心の中で存在し続けられる。
抱きしめられた腕は確かなもので、香りも質感もしっかりしていた。
それが彼に触れた最後。
あたたかな温度も、感触も。