キミが刀を紅くした

「俺が何を考えているか教えてやろう宗柄。ただ、生き残る術だ」



 良く見れば少し痩せた頬、あれだけ気迫に満ちていた雰囲気は消え、十は年老いた様な丸い背。

 時代を負う事が簡単ではないのだと、彼はその姿で語っていた。



「紅椿はぬるい。初めの頃に比べれば目撃証言も増えている。誰かがへまをして新撰組に捕まるのはもう、目と鼻の先の事だろう」


「そう見えますか」


「見えるとも。丑松は夜帝に、歳三は近藤にお前は村崎に忙しい。そして村崎は自らの意志を優先して、未だに世直しに夢中だ」


「紅椿を疎かにしている訳ではないでしょう。仕事はこなしてる」


「果たしてそうか。俺はな宗柄、邪魔にはならない捨て駒が必要なんだ。いつか私の邪魔をする愚かな人間は一人だって必要ない」


「――だから試したんですか。紅椿を最優先に考える様な奴じゃないと、貴方の野望の邪魔だと?」


「野望などと個人的な言い方は好まない。俺は国を良くしたいだけだ。その為に徳川はまだ倒れる訳にはいかないんだ。分かるか」



 ――紅椿の終わりは近い。

 俺はその言葉にふとそんな思いを過らせた。彼が本当に国を思っているのなら尚更。だって紅椿は消えなければいけない存在。

 その時俺はどうなるんだか。



「徳川の為に紅椿を創った。それは今でも相違ないのだろ宗柄」


「そうですね」


「ならば俺に聞く前に考えろ。一国を動かす俺が私用で動くかと」



 俺は言葉もなく立ち尽くす。慶喜殿はその間に部屋を出てしまった。私用で動くか考えろ、か。

 年中私用でしか動いていない俺には少し厄介な課題だった。



「――大和屋、主は近々動く」


「どう、動く」


「それは知らない」



 服部はそれだけ言うと首を振って何処かへ消えてしまった。

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