リメンバー
原因はいじめだった。

上履きの中にしまわれた遺書には、彩弓をいじめて楽しんでいた恵美子と香奈枝に便乗し、受験のプレッシャーに苛々していた私は妹を打ちのめした。

何で、姉の私にまで同じ事をしようとするの。

私だって、好きで二人と共謀してあなたを陥れたわけじゃないのに。

だって、受験競争が辛くて、先生もパパもママも受験、受験ってテープレコーダーみたいに繰り返して、いい加減うんざりしていたんだもん。

私は、一生懸命勉強してたし、彩弓と違って学校にも行ってたのよ、だって学校に行かなかったら恵美子たちが何をするか解らない、私の机に花が活けられるかもしれない。

いやだ、いやだいやだいやだいやだいやだ。

彩弓と一緒にされて、キモイ姉妹だなんて、言われたくない。あなたみたいに私は太ってもいないし陰気くさくもない。

正直、彩弓が自分の妹だっていう現実から逃げ出したかった。

太って醜い、陰気な妹。

『やだよ、彩弓みたいなのと血が繋がっているなんて吐き気がする、早く消えちゃえばいいのに』

恵美子と香奈枝、そして私は妹を囲って雑巾の絞り汁を浴びせたり、妹の教科書や制服を目の前で破ってやった。

あなたがいけない。

あなたが太っていて、まるで怪物みたいな足音させて夜中に家中を歩き回ったりするから、勉強だって出来なかった。

パパもママも彩弓ばかり心配して、私のことなんか置き去りだったじゃないか。
憎らしかった。

なんで、あんな不細工ばかり心配するの。私のほうが優秀で、よくできた子供だったはずなのに。

私は、部屋に放置されたまま行き場を失った彩弓の私物を見渡すと、片っ端から手に取り全てを破壊した。
ボールペンを折り、制服を破いて、髪の毛が絡まったブラシも、壊れたカバンも全て壊した。

こうすれば。

きっと、あいつはこの部屋から出ていく。

だけど。

部屋でひとり、汗だくで動く私をとらえた鏡には、瞳孔を開き一心不乱に破壊する自分の奥で、壁に貼り付く様に立っている彩弓の姿があった。
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