¥時給1000万円
「…ご……ご注文は…」
「さぁて…今日は誰に賭けようか…」
「………」
小向は未だに この空間の状況を理解していない。
「…ハハハッ!!まだ何も分からねーか…!ハハハッ!」
男は再び歯を剥き出しにして笑う。
小向はただ呆然としていた。
まるで初日の自分を見ているようだった…。
「……すまんすまん!……んじゃあ とりあえず焼酎で。…がんばれよー」
「…はい………」
小向は『焼酎』と書いた紙を厨房へ持って行く。
永井もコックから注意されていたように、小向も 酒はカウンターで作るようにと言われた。
それに気付いた二葉が急いで教えに行く。
二葉には 初日の時 以来、たくさんのことを教わった。
酒など飲んだことも作ったこともない自分に、知らない注文が入る度に優しく教えてくれた。
氷の数、水と酒の割合、シェイカーを振る回数、専用のグラスなど…丁寧に何度も実践して教えてくれたため 永井は すんなり覚えられた。
事細かく書いたメモ用紙を渡してくれたりもした。
それから二葉に頼るようになった。この人の存在は自分の中で重要な位置を占めていると…