¥時給1000万円
自分が生き残れるのは この人のおかげなのではないかと思った。
小向にとっても 大切な存在の人になってくれればと思った。
彼が生き残れるためにも…。
「…おーい永井ー!…俺にも注文よこせー」
最近 常連になりつつある若い男性に呼ばれた。
「はーい!!只今お伺いしまーす!」
先程注文を受けた伝票を厨房へ持って行き 客のもとへと急いだ。
今日は気のせいか厨房が騒がしい。
その後足取りは軽く、いつも厨房にいる白髪のおっちゃんが伝票をすべて受け取ってくれたため自分のミスは目立つこともなく、料理もしっかりと運べたりなど、快調に仕事は進んでいった。
「…はーい!終了~!」
オーナーの軽快な声で第一部が終わった。
「んじゃあ~、いつものように、ちゃんとがんばってくれた従業員ちゃんの名前を書いちゃって ちょうだいっ!」
陽気な合図で投票が始まる。
相変わらずのBGMも気にせず、客らは手元の紙にさらさらと名前を書いていった。
「…分かってると思うけど、今回はーまだ働き始めの小向ちゃんは少し甘く見てくださいね。……それと~もし不正がみられた場合は………従業員になって働いてもらうので要注意よー…!」
片方の口をつり上げるオーナーの表情が不気味に見えた。
常連は即座に賭けを宣言…
後から新顔がためらうように賭けてきた。
「…小向に三口…!」
小向はキョトンとした。
「灘に一口!」
「……中村で…五口…」
「…二口…永井に!」
永井はだいたい初めて見る客に賭けられることが多かった。