Sin(私と彼の罪)




「ちょ……」

「放さない」




顎をつかまれて、唇が触れそうなほど近くなる。
吐息が私の唇を擽る。


ああ、もう。





至近距離で見つめられたら、どんな女だって彼に身を委ねるだろう。


小さい宇宙みたいな、黒に捕らわれる。





この瞳が、愛しい。





「お前は俺のもんだ」






彼が愛しくて、しょうがない。








「…一生な」








愛しくて、しょうがない。







「………っ」





彼はそのまま私の服に手を掛けた。

手慣れた動作で、されるがままになってしまう。



「ま、待っ………っ!」



そんな私の言葉なんて聞きもしないで息もつかないような、キスをする。


彼の舌が全てを絡めとって、文字どおり放してなんかくれない。

口の端から唾液が零れるのを感じた。




「黙ってて」



そう言って彼は私の頬に零れた唾液を舐めとる。


細くて角張った指が、体に触れるたびにぞくり、と反応してしまった。


その甘美な動作に私の熱はどんどんと上がっていく。


それもその様子を、時折観察するように見下ろすから、たまったものじゃない。




「…!…っ……ん」




上がった息を整える暇も与えてくれない。





本当、自分勝手な男。





< 124 / 126 >

この作品をシェア

pagetop