Sin(私と彼の罪)
「落ち着いた?」
ミネラルウォーターを渡されて、それに口をつける。
もうこれは、大失態だ。
「ハイ。もうすっきりです」
「相当ゲロ吐いたしな」
「うっさい」
私はクッションに顔を埋める。
横でくっくと笑う声が聞こえた。
…サイテー。
なんでこいつに吐いたとこを見られなきゃならんのだ。
飲みすぎた私が悪いんだけど。
「お前よく帰ってこれたな」
「親切に送ってくれた人がいたの」
「は?」
そういえば、私ホストのことすっかり忘れてた。
さすがにもう帰ったと思うけど。
おもむろに玄関まで行き外を覗いたが、もちろんそこには誰もいなかった。
「ここまで送ってもらったのかよ」
戻ってきた私にゼンは言った。
「うん」
「男かよ」
「…だったら、悪い?」
なんだかゼンの言い方にムカついた。
自然と口調がきつくなる。
「お前、ばっかじゃねーの」
「なんであんたにそんなこと言われなきゃいけないわけ」
イライラする。
それと同様にゼンの周りの空気が、ピリリと張り詰めたのを感じた。
「こんな時間に女を送ろうとする男には警戒しろよ」
いつもより格段に低い声。
それが彼の怒りを象徴していた。
「しょーがないでしょ。フラフラだったんだから」
「だからって男なんかに送られんじゃねーよ」
なんだ、この融通のきかない彼氏のような発言は。
まるで私が浮気を責められているみたいだ。
そう考えると、私の怒りのメーターも一気に上がった。