Sin(私と彼の罪)
まるで自分の家のように、ジャケットや携帯をポイポイと放り投げる様に、何故か安堵が生まれた。
ゼンは、いつものゼンだ。
彼の目が私に向けられて、あの言葉を思い出した。
「セックスレス」
あり得ない、と思って急いで視線を外す。
なに考えてんだろう、私。
さっきまで酷い頭痛にびくびくしてたのに。
「オウ、飯あるか?」
「あるけど…」
私はとぼとぼとキッチンに向かった。
小さな鍋に火をかけて中を覗く。
今日のメニューはホワイトシチュー。
一昨日の夜にゼンが「寒い。シチュー食いたい」と言うので作ったのだった。
結構美味しく作れたので、彼が来たことは素直に嬉しかった。
「これ、今温めてるから勝手に食べてて」
「シノは?」
「お風呂入ってくる」
「んーわかった」
熱々のお湯に浸かって冷えた身体と、馬鹿みたいな考えとおさらばしよう!
そう心に決めて、風呂場に向かおうとすると、真っ黒な巨体に阻まれた。
「お、シチュー」
なんて呑気に嬉しそうな声をあげるゼン。
でも何故か…近い。
そのせいで見上げるような体制になる。
意外とたくましい胸板を直視できないのだ。
「お前さ」
「なに。どいてよバカ」
動揺を隠すように私の口調は荒くなった。
「なんか、顔色悪くないか」
ずい、とゼンの顔がより近くなった。
思わず身を反らす。
「…っ」
これ以上、近づかないでほしい。
知りたくなかった欲望があることが、嫌でもわかってしまう。