Sin(私と彼の罪)
その様子をじっと見ていた男は、先程殺したブタ男が座っていた豪勢な椅子に、どっかりと腰を下ろした。
吸っていた煙草を、携帯灰皿に器用に詰め込む。
最後の紫煙を吐きだすと、俺を見ずにこう言う。
「仕事だ」
俺は呆れて、男に向き直った。
「おいおい、そりゃないだろーが。今終えたばかりだ」
「急なんだ、勘弁してくれ」
この男が自ら足をのばすような仕事だ。
ろくなもんじゃあない。
俺は両手を上げてひらひらと振った。
「パスだ。一日中このブタを張ってたんだ、俺だって疲れてる」
脂ぎった男の頭を軽く小突く。
ごろりと首が曲がり、断末魔の表情がさらされる。
「頼むよ」
「やめてくれ、明日だ」
俺はそう言って男に背を向けた。
「俺は帰って休む。報告はいらねえだろ?あんたも早く戻ってくれ」
そのまま大きな茶色い扉の前まで歩く。
ハンカチを持ち直し、ドアノブに触れようとして、ピタリと止まった。
「…オイ、どういうつもりだ」
ゴツリ。
後頭部に重厚な鉄の塊を感じる。
長年、使ってきたその感触は見なくても容易にわかった。
「…これは、命令だよ。わかってるだろ?」
「チッ…」