Sin(私と彼の罪)
「そうですか、つまんないなあ」
「あ?」
「善さんが本気になるような女なら、興味ありますから」
「どういう意味だよ、それ」
苛立ちが募る。
どういうわけか、ヨージの言葉に不快感を感じた。
「いえいえ、特に深い意味は。ただ、善さんは俺の憧れっすから、女関係も気になるってことですよ」
「ストーカーか、お前は」
「やっだなー!違いますって!」
「俺なんかより、ヨコイでもさぐってこいよ」
俺がそう言うと、ヨージは明らかに肩を落とした。
禁句だったようだ。
そういえば、この間ヨージはヨコイとの接触に失敗したのだった。
「それができれば、こんなにへこんでませんってえ」
「お前、落ちてたのか?」
「ひっど!善さん、ひどいっす!バリバリ落ち込んでるじゃないですかあ」
顔を真っ赤にして言うことではない。
俺やタキがこの店でせっせと働いているときに、ヨージは酒を飲んで女を口説いているのだ。
ふざけるな、と言いたい。
「お前のことだから、明日にはけろっとしてるんだろ」
「そんなことは~」
へらへらと笑っている。
こりゃあ、学習しない男だ。
「俺はいいが、タキは怒らすなよ。あいつ、真面目だから」
「あっ。そっか、タキさんもいるんでしたよね。気をつけなくちゃ」
「おい、俺はいいのかよ」
「いやっ、善さんは懐の大きい人だから…」
懲りずにごまをするヨージ。
段々、俺もうんざりしてくる。
「黙れ。お前はちゃんと仕事しろ。わかったな?」
これ以上付き合っていられない。
殴ってしまいそうだ。
ヨージの「はい…」という声だけ聞いて、俺は踵を返して店の奥へ戻った。