インスタントラブ~甘くて切ない一目惚れの恋~
いまだけは
暗い過去も
汚れた記憶も
なんにも関係ないんだ。



いま
このときだけがあれば
それでいい。



そう思うと、
あたしはとてつもなく安心できた。



でも、
またなんで、
手なんか繋ぎたがるんだろう。



そうしていると
しばらくして、
その疑問に答えるように
ひかりはいった。



「こうしてると落ち着くんです」



ぎゅっ。



わずかに
それとわかるくらいに握ってくると続けた。



「昔、まだ小さかった頃、よくお兄ちゃんがこうしてくれてたんです」



懐かしむようにいうひかりがちょっと羨ましかった。



ただ
そのぶん反感もあった。



「親はしてくれなかった?」



「はい。記憶してる限りでは」



ひかりはそう言葉を選ぶようにしていうと、慌てていい直した。



「あぁ、でも、お母さんは帰りがいつも遅かったんです」



「オヤジは?」
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