インスタントラブ~甘くて切ない一目惚れの恋~

最終章/第2節  愛とは許しあうこと

タクシーは
鬱蒼と茂った木立を抜けると、
いよいよ山道に入っていく。



うすぼんやりとではあるけど、
どこをどう通っていけば、
そこに行きつくのはおぼえてた。



あの夏の夜、
命からがら駆け下りた
細い山道。



ただ、
まる一晩かかったのが、
車なら小一時間でついた。



「もしかして、ここに以前いた子?どうしてこんなとこ行きたがるのか、さっきから気になってたんだけどさ」



おばちゃんが
あたしたちを交互に見る。



「そうです」



あたしは
あっさり認めた。



とぼけることもできたけど、
そんなことする必要もない。



すべては、
もう過去の出来事なんだから。



そう思わせるだけの
変わり果てた光景が
そこに広がっていた。



すでに
廃屋同然の施設。



蔦が家
全体を覆い尽くしてた。



そのまわりは
人の侵入を阻むように、
草木が生い茂ってる。
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