Sin〜AfterStory
シン、誘拐される?
「じゃ、行こうかシン」

「ん〜」

夏らしい暑さが緑を濃い色にし始めた季節。

麻のシャツを着せてもらい、お気に入りのキャスケットを被ったシンはジャックに抱き上げられてアパートの階段を下りた。

ジャックが仕事に行っている間、八百屋の店主が体の不自由なシンの面倒を見ていてくれる。

毎朝ジャックと一緒に“出勤”するのがシンの日課だ。勿論、帰宅も一緒。

「あー」

車椅子に乗せてもらったシンは、引き攣っている手から落とした封筒を指して声を出した。

「ほら」

拾い上げて手渡すと、にかっと笑う。少し、ほんの少しずつではあるが表情が戻ってきている。

退院当時は笑うと引き攣っているように見えた。でも近頃はちゃんと笑顔に見える。

よく笑うようになった事が良いリハビリになっていたのか、顔の筋肉の麻痺が回復しているのか。

どちらにしても良い方に向かっている事には違いなかった。

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