Sin〜AfterStory
「おっかしいな、この辺にしまったはず」

八百屋の店主は戸棚をあちこち開きながら独り言を呟いた。

テーブルに置かれたトレーには、氷を浮かべた紅茶が二つ。

グラスの表面に集まった水滴は少しずつ大きくなり、つぅと滑り落ちる。

緩やかに溶けていく氷が、時々カランと涼しい音を立てた。

「あった、あった。こんな所にいやがった」

店主は自分がそこにしまった事を棚に上げ、まるでお菓子が隠れんぼしていたかのように文句を言う。

結婚して街を離れた娘から送られてきたクッキー。以前シンにプレゼントした所大好評だった。

また送ってくれと頼み、昨日届いた。シンに食べさせたくて大事にしまい、そして忘れた。これは歳のせいか。


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