月の恋人
「……翔、くんっ………」
(よかった、帰ってきたんだ。)
安心したのも束の間
あたしと涼を見下ろす翔くんの目が……冷たい…?
(…どうして、そんな顔するの?)
それは
微かな苛立ちを含んだ視線。
「……優雅なワルツに誘われて来てみたら……何してんの、姉弟で。禁断の愛でも育ててんの?」
「…キンダン…?」
また翔くんが
訳のわかんない事を言ってる。
「…翔くん、よく分からないんだけど………助けて??涼、眠りこけちゃってて、放してくれないの。」
「………へーぇ……」
ゆっくり、ゆっくり
一歩、一歩、翔くんが近付いてきた。
「…ホントに涼が夢の中かどうか、確かめてあげようか。」
「……え? あ、…きゃっ………」