月の恋人




「………… な、んで……」

翔くんは、あたしを見たまま呟くように言った。



―――…沈黙。


あれ以来、口をきいてなかったから

翔くんと、ちゃんと目を合わせるのすら、久しぶりな気がする。





「あれ? やっぱ二人とも、知り合い?」

と、大男が割って入ってきた。


「タケル……どういう事だ?」


「ぶっ………そんな怖い顔すんなって。子猫ちゃんなら、上で拾った。」


「は?」


「可愛かったからさー。つい。」


「…………お前、なぁ………」



…………よく分からないけど、二人は相当仲が良いんだろう。


大男が入った途端
張り詰めていた部屋の空気が、柔らかくなったから。



それは翔くんが気を緩ませている証拠で。


家では決して見せない、ラフな表情をしていた。








< 179 / 451 >

この作品をシェア

pagetop