月の恋人
「………… な、んで……」
翔くんは、あたしを見たまま呟くように言った。
―――…沈黙。
あれ以来、口をきいてなかったから
翔くんと、ちゃんと目を合わせるのすら、久しぶりな気がする。
「あれ? やっぱ二人とも、知り合い?」
と、大男が割って入ってきた。
「タケル……どういう事だ?」
「ぶっ………そんな怖い顔すんなって。子猫ちゃんなら、上で拾った。」
「は?」
「可愛かったからさー。つい。」
「…………お前、なぁ………」
…………よく分からないけど、二人は相当仲が良いんだろう。
大男が入った途端
張り詰めていた部屋の空気が、柔らかくなったから。
それは翔くんが気を緩ませている証拠で。
家では決して見せない、ラフな表情をしていた。