月の恋人




「チッ…… イイとこだったのに…」

タケルさんが、翔くんを見上げて口先を尖らせる。



「イイとこ、じゃねーよ、ヒトのもんに手出すな。」


「お前には鹿島さんがいるじゃんか。」


「…… それとこれとは関係ないだろ」


「いや、大アリだね。」


「…… お前、俺だけ働かせて… 遊んでんじゃねーよ……」




話が、まったく、見えない。

あたしはタケルさんと翔くんの間に挟まれた位置にいるのに

2人の会話は、上を通過するばかりで

一向に、入れなかった。






「―――… 翔くん? ここで、何、してるの?」


「陽菜ちゃんこそ…… もしかして、俺を探しに来てくれた?」


「……………っ、ママが、今日も翔くんが帰らないなら、警察に連絡するって言うから」


「あぁ、ごめん。昨夜から徹夜で作業してて… さっき気づいて、おばさんに連絡したんだけど… 行き違いになっちゃったね。」


「………… どういうこと?」




翔くんとタケルさんが、友達なのは分かった。
けど……



「翔くん……、ここで、何してるの?」


あたしが、そう言った途端

クスクス、と耳元で笑う気配がした。




「……… タケルさん?」










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