月の恋人
「あぁ――… ごめん、つい。… ていうか… 翔、お前、ほんとに何にも話してないんだな」
「話すような暇がなかったんだよ… 忙しくしたのは、お前だろーが…」
「こだわり過ぎてんのは、翔だろ。」
「――… だから、…何が、ですか?」
いつまで、あたしは焦らされるんだろう。
話は進んでいくのに内容が分からない。
映画の導入部分を飛ばして途中から観たら、きっとこんな気分だろう。
あたしは抗議の意味も込めて
タケルさんを軽く睨んだ。
タケルさんは、“まいった”とでも言うように肩をすくめて、あたしに言った。
――――――…
「翔は… 俺らの…ブレーンなんだ。」
【嵐とピアノ】終