月の恋人





タケルと出会ったのは、その頃だった。




「噂の天才少年って、おまえ?」



ノックも無しに、いきなり練習室のドアが開いたと思ったら、

そこに立っていたのは先生じゃなくて、見知らぬ少年だった。


当時からやたらと背が高くて、色素の薄い髪の下には、好奇心に溢れた目がキラキラしていた。




「… いきなり、なに? おまえ、だれ?」



貴重な時間を邪魔されて、機嫌の悪い俺の表情なんかお構いなしに、タケルは続けた。




『… もうひとりの天才少年。』


あの時の不敵な笑みは、10年経った今も、ちっとも変わらない。








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