月の恋人
言葉の代わりに
そのまま降りてきた翔くんの右手に、左手を重ねた。
大きな、手だった。
包み込まれるような、安心感。
前に、どこかで――…
「陽菜ちゃん…」
気付いたら、目の前に翔くんの顔があった。
真剣な、真剣な、眼差し。
「キス、していい?」
にわかに心臓が音を立てた。
体温が一度上がっちゃいそうなくらい。
視線を逸らして微かにうなずくと
きつく抱き締められて唇が重なった。
息をつく間もなかった。
それは、今までしたどのキスより、荒々しかった。