月の恋人
「―…いま、俺たちが見てる星ってさ、光の速さで何百年、何千年って時間をかけて地球まで届いてるんだって。」
離れの縁側に
ふたり、並んで腰を降ろすと
足元の雑草が、素肌をくすぐった。
無数に輝く天体の不思議。
まるで、星空に浮かんでるみたい。
「でも、その光を目にできるのは、場所や時間帯、気象条件が整った…ほんの一握りの人だけなんだ。
そんな、奇跡のような瞬間が―…日常には、溢れてるんだよな…」
―――… 翔くん?
「きっと……人間の体だって、同じだよ、陽菜ちゃん。小さな宇宙が、ここにあるんだ。」
そう言って、翔くんは人差し指であたしの喉に触れた。
「絶対に、治るから。どんなに時間がかかっても、俺はちゃんと、受け止めるから。
だから―…発することをやめないで。光は、常に陽菜ちゃんの中にあるから。」