月の恋人
どうして、だよ。
お前の好きなのは、オレじゃなくて翔、だろ?
なんで、オレのことでそんなに傷つくんだよ。
間違ってるだろ――…
「お前がいなくなってから、陽菜ちゃんは、ずっとお前を探してたよ。俺が隣にいても、いつもお前の事を考えてた。俺じゃ、ダメなんだ――…頼む。スコットランド行き、考え直してくれないか。」
「翔……」
――――…
「おや―…先客、だったかな?」
その時、場違いに静かな声が俺たちの間に割って入ってきた。
豊かな髭を蓄えた、英国紳士。
周りの景色と全然溶け込まない容貌の―…、
「叔父さん……」
「――…芹沢さん…どうして…」
答えを、出さなければ。
陽菜―…オレは…
オレは、どうしたらいい――…?