不器用男子
「ご注文は…?」


 さっきのことを思い出さないように、心配をかけないようにずっと笑顔でいた。

 しばらくすると、接客から厨房に戻ることができて少し安心。

 でも…。


「せんぱ~い!! 遊びに来ましたぁ♪」

 樹里菜ちゃんがさっきのお姫様風のワンピースで私たちのクラスに遊びに来た。


 しかも…。


「ごめん!! ひなみちゃん!! 今だれも手開いてないから接客に戻って!!」


 マジですか…。


 見事に樹里菜ちゃんのテーブルへ当たった。


「ご注文は…なんです…か?」

「せんぱ~い。 顔が引きつってますよぉ? そんなので大丈夫ですかぁ?」


 樹里菜ちゃんのあの顔、あの声。

 こっちに伸びてくる手。


 さっきのことがフラッシュバックする。



「いやっっっ!!!!」

 樹里菜ちゃんの手を振りはらって離れた。

「先輩~? 痛いじゃないですかぁ~!!」


 ほかのお客さんの視線が一斉に向けられた。


「すいませっ…ん…。」



 樹里菜ちゃんの行動が怖い。

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