不器用男子
「…何がしたいわけ? 離れろ。」

 冷たい目でそう言い放った千隼は席を立ちこっちに近づいてきた。


「ひなみ? なんか用?」

 さっきとは大違いにいつも通りの千隼。

 怒ってないみたい…。

「ううん! ここに本届けに来ただけだよ!!」

「…で、その本は?」

「へ? あっ、ヤバい!! 大塚君に渡したままだった!!」


 うわっ…悪いことしちゃったなぁ…取りに行かなきゃ。


 ふと教室の中を見ると桜ちゃんがすごい勢いで私を睨んでいる。


 大きな目は今まで以上に大きくつりあがってる。


 千隼は桜ちゃんに背を向けてるから気付いてないみたい。


「わっ、私本取りに行ってくるね!?」

 早くここから離れたい。

 千隼とは離れたくないけど、さっきみたいにまた避けてくれたら安心できる。


「あっ、待て!! 俺も行くから」

 千隼はもう一度教室に入ると鞄を持ってきた。


「え? 千隼、午後の授業あるんじゃないの?」

「あぁ…平気。 どっちにしろ抜ける予定だったから…一緒に帰る?」

「うん!!」

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