手と涙 〜婚約者はピアノ講師〜
浩平はもう一度柚香に視線を戻すと

心底済まなそうな表情をした。



「ごめん、柚。

俺ちょっと滝口休ませてくるから。

柚も早く会場戻るんだよ?

一人で行けるか?」


「あ・・・、うん。

大丈夫。

き、気にしないで」


咄嗟に笑顔を作ると

小さく手を振った。



そんな柚香の様子に

浩平は安心したかのように

ふっと微笑を浮かべた後。


不意に真顔になり

柚香の隣の蒼介に視線を移した。


「・・・あの、あなたは?

・・・柚の知り合いですか?」


浩平の言葉に弾かれたように

柚香も蒼介に顔を向けた。


「ううん・・・しらな・・・」


当然のように否定しようとした。



しかし蒼介は

煙草を口の端で咥えたまま



「ソォデスネ。ま、ちょっとした

知り合いです」


と言い切った。



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