pupil
ダークな短編小説
「瞳が帰ってきたんだ」

綾戸くんがおかしくなってしまったと思った。

瞳とは、自殺した綾戸くんの元彼女である。

綾戸くんに関係する女性はみんな狂ってしまう。
私と名前が同じ志保さんも狂っていた。
彼が映画造りしか興味が無く、独りで生きようとするあまり女は自分も独りで生きようと無理をして身体を壊す。

私は彼と一緒にSVとして働いていたとき、彼女の相談によく乗っていた。

「彼女が最近おかしいんです。元々精神世界やスピリチュアルな世界の好きな子なんですが、長文でスピリチュアルな内容の文章をメールで立て続けに送ってくる。mixiのハンドルネームも毎日違う。
『今日朝起きたら私はシヴァだった』とかいうんですよ。
もう付いて行けない。メールも返信してない。もう嫌ですよ。別れたいな。出会った頃はいい感じだったのになあ。」

瞳さんはDJで、ヒッピーで、洋服やヘンプのアクセサリーを手作りして路上で売っている子だった。
いつも綾戸くんが腰に付けてるヘンプのキーチェーンが可愛くて、
「どこで売ってるの?」
と聞いたら、彼女の作品だと聞いて驚いた。

私をmixiに招待したのは綾戸くんである。
瞳さんは日記を全体公開にしていたので、
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