あやめ
ちょうどその頃、僕は同級生の女の子から猛アプローチを受けていた。
「中川君って、莉子ちゃんと付き合ってるの?」
そんなふうにまっすぐに聞かれると、僕はどう答えていいのかわからず、あいまいに笑うだけだった。
「私、中川君の彼女になりたい」
そう言ってはにかむその子は、お人形のようなかわいらしい顔をしていた。
男子達にとても人気があったので、僕も悪い気はしなかった。
でも、それは最初のうちだけだった。
「莉子ちゃんって、男好きだよね。誰にでもいい顔するんだもん」
「こないだ、莉子ちゃんがバスケ部の先輩に迫ってるとこ、見ちゃった」
「莉子ちゃんって、お金もらって、おじさんに変なことさせてるみたい」
ありもしないことを真顔で言う彼女が、怖かった。