あやめ
巧にとって、莉子の第一印象は最悪だった。
「あー!!“中川巧”だ!」
中学校に入ってすぐ、廊下を歩いていた時のこと。
巧の行く手をふさぎ、思いっきり指をさしてきたのは、少年みたいに髪が短くて、やたらと目の大きな女の子だった。
「同じ中学だったなんて!もちろんバスケ部入るんでしょ!?」
あまりの騒がしさに、行き交う生徒達の注目を嫌というほど浴びた。
中学生という微妙な年頃に、知らない異性に声をかけられるということがどれほどの事態なのか、彼女はまるで気付いていない。
巧は恥ずかしさで居たたまれなかったし、後で散々友達にからかわれることになる。
できることなら、この先彼女には関わりたくないとまで思った。