彼が猫になる
暫し私達は喋った

ほんとに初対面を感じさせない

二人の人間の間には猫

妙な配置

話込むにつれて

猫ちゃんもあたしに寄ってきてくれた

っていっても

まだまだ彼には敵わない

「彼女の名前は??」

ふと聞いてみた

「俺、彼女おらんしぃ~」

「違うよ。彼女 猫ちゃん」

「ああ」

猫ちゃんは「姫猫」

彼はヒメっちて呼ぶらしい

飼い猫じゃないけど

彼が川にくると

どうしてだかヒメっちが来るらしい

「素敵な彼女ね」

「さっきからヒメっちの話ばっかやん」

そーいえば

猫の事ばっか聞いてしまっていた

「猫好き?」

ん~そうでもないけど

「何か彼女には一目惚れで」

ははは。

猫トークで何故か盛り上がる

「そーなんだよ。
  こいつ、何かやけに色っぽいていうか」

そうそう!

あたしも見た時 ドキってしたもん

だよなぁ

ふと会話が途切れた時

手が悴んでる事に気付く

あっ!

もうこんな時間!!

「あたし合コン行くんだった!」

「マジかょ! そんなドロドロで?」

しょーがないじゃん

人生最後なの!って言いながら

立ち上がった

「これ。」

彼が差し出した手袋

なに??

「今日は冷えるから」

「ぇえ。 ぇぇっと…」

「一護。 俺一護ってんだ」

「手袋無かったら
  一護が寒くなるじゃん」

気軽に話しすぎて

思わず一護って呼び捨てしてしまった

彼はそんな事気にせず

手袋を突き出した手を引こうとしない

「んっ。」

ほれってまた手を出してきた

「…有難う」

あたしは精一杯の笑顔で

アリガトって

彼ははにかんで

そうそう女の子は素直じゃないと

って顔してた

「じゃぁね~ ヒメっち♡ 」

「にゃぁ~」

「またな!」

あたしは川を後にし、方向だけ確かで走っていた


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