クマさん、クマさん。
―俺、熊谷空也!―
―真中菜摘さん?よろしくね―
―俺もなっちゃんって呼んでいい?―
―なっちゃん、これってどうやるの?―
―なっちゃん料理上手いね!―
―なっちゃんはどこの高校に行くの?―
―そうなんだ。頑張ってね―
―バイバイ、またな―
クマさんとの思い出が頭の中にゆっくりと出てくる。
クマさんといっぱい笑った。
クマさんといっぱい話した。
クマさんといっぱい、いっぱい思い出を作った。
でも、あたしは伝えられなかった。
怖かったから。
伝えたら友達として拒否られることが怖かったから。
あの優しい笑顔で笑ってもらえなくなるのが怖かったから。
だから伝えることなんて考えずに、クマさんをずっと想うことしかできなかった。
ピンポ―ン
ガチャ
「本当に来たんだ」
久しぶりに見た笑った顔。
「久しぶり」
「うん。久しぶり」
「ねぇ、クマさん」
「ん?」