クマさん、クマさん。
「今日さ、会社の奴らがさ」
朋秋の話しを聞いてないけど相槌だけはする。
これはいつものこと。
信号を待っている時、反対斜線を見つめた。
「え・・・」
「菜摘どうした?」
朋秋の声なんて聞こえなかった。
なんで?
なんでいるの?
アメリカにいるんじゃなかったの?
伊能がアメリカの会社に入ったって言ってたのに・・・。
「クマさん・・・」
「熊?どうした菜摘?」
なんでクマさんがいるの?
「菜摘、青になったから行くぞ」
ぼーっとクマさんだけを見ていたあたしの腕を朋秋が掴んで歩く。
反対からクマさんが歩いて来る。
嫌だ・・・朋秋といる所なんて見られたくない。
あたしは歩道の真ん中で立ち止まった。
「お前いきなりどうしたんだよ?」
だんだん朋秋の声が低くなっていく。
たぶんあたしの意味不明な行動に苛ついてるんだ。
そんな時クマさんがあたしの目の前に来た。
クマさんと目が合う。
「なっちゃん?」
気づかれた。
それも朋秋があたしの腕を掴んでるんだ。
きっと、あたしの智秋が彼氏だってこともバレた。
最悪だ。
クマさんなんて言うかな・・・。
クマさんを見ると、クマさんはいつものように笑っていた。