クマさん、クマさん。


「え?」


クマさんの意味不明な発言に困っていると、


「えっわっ」


「は?おいっ!菜摘!」


クマさんがいきなりあたしの手を掴んで走り出した。



この大きな手。


暖かい手。



ずっと忘れられなかった手。



「クマさんだ」


久しぶりに流れた涙だった。



クマさんとあたしは中学校までずっと走った。



「ハァハァハァ」


走りすぎて呼吸しか出来ない。



「ハァハァハァ、もう歳だな。疲れたよ」



クマさんは笑って言う。


最後に会った時よりまた一段と大人っぽくなったクマさん。



でも、それ以外なにも変わっていないクマさん。



あたしが忘れられない人。



「・・・ここ懐かしいね」


「・・・そうだね」



2人でグランドの真ん中に立った。



クマさんに聞きたいことはいっぱいあった。


でも今はなんだか聞けない。



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