Dear...

過去

「未来ちゃん、大丈夫ですか?」
未来が呼ばれて、明日香と一緒にいる中、カコが言った。
「あぁ、大丈夫だよ?いっつもだもん、未来は」
その言葉に?マークを感じていると、明日香は椅子の背もたれを前にして話した。
「あたし、未来と隣の中学だったんだけど、未来はすごかったよ」
「何がですか?」
カコが明日香を見ると、明日香もカコを見た。
「かこっちゃんはまだ、知らない方がいいよぉ~」
そう言われると、余計知りたくなってしまう。
「大丈夫です!教えてください」
本当に?と明日香が問うと、本当に!と返した。
「簡単に言えば・・・」

「問題児って言えばいいのかな」
問題児、それはカコも一度は言われた言葉だった。
カコの場合は不登校児、のほうが正しいけれど。
「で、女子高来たらあの性格じゃん?」
サバサバしてて、綺麗で。との言葉に頷くカコ。
「モテて、モテて。さっき、未来が職員室行く前なんかみんな集まったでしょ?」
うん、と頷く。
「女の子に呼び出されるのなんか、毎日」
本人は何とも思わないみたいだけど、と続ける。

そうだよね・・・。
モデルさんみたいに顔が綺麗で、あんな分け隔てない性格だったら・・・。

「そいえばさ」
明日香が言った。
「かこっちゃんってどこ中?」
ドクン、と強く鼓動を打った心臓。
明らかにさっきとは表情が変わったカコに、明日香も眉をひそめる。
「・・・かこっちゃん?」
その言葉で我に戻ったのか、カコは無理な笑顔を作った。
「わたし、田舎出身なんですよ・・・」
言っても分からないと思います、と呟く。

・・・中学の思い出なんかない。
ただ、嫌な記憶と、楽しそうな誰かの声。
本当は話したくも無い。
でも、見抜かれる訳にもいかない。

「本当に田舎で、田んぼだらけ・・・」
「・・・思い出なんか一つもないです」
徐々に暗くなっていくカコに、明日香は言った。




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