Dear...

未来

その頃あたしは、職員室の中に居た。
名前を言うと、いつもの先生がやってくる。
「こっちへ来なさい」
腕を掴まれ、奥の会議室へと入らされる。
「ッ、離せよ!」
無理やり腕を離すが、何も言わない先生。
あたしがパイプ椅子に座ると、先生も向かいに座った。

「何であたし毎日のように呼び出されるんですか?」
足を組もうとするが、足で阻まれる。
「お前が問題を起こすからだろ?」
はぁ?と返す。
「今日だって、電車内で騒いだらしいじゃないか」
「騒いでないですよ」
そう返すと、笑い声を上げて笑われる。
「お前に言い寄られたっていう生徒がいるって他校から抗議が来たんだよ」

「あたしはただ、優先席でそいつらが席を独占してたからお年寄りに譲れって言っただけですよ?」
「言い方っていうもんがあるだろうが」
「言い方?そんな奴に言い方もクソもあるんですか?」
大きい溜め息をつくと、先生は立ち上がった。
「お前は中学の頃、問題ばっか起こしてたらしいな」
その言葉に、深く椅子に座り込む。
「今更中学の話引っ張ってきますか」
「いつ問題起こしても、おかしくないよな?」
うるさい。
うるさいよ、あんたに何が分かるんだよ。

「・・・んて」
「はぁ?」
「あんたみたいな人でも教師になれるなんて、世の中本当腐ってますよね」
笑ってみせると、ネクタイを引っ張られた。
「何ですか?」
「お前みたいな生徒がいるからこの学校はだめなんだよ」
「だったら、あんたの手で変えてみせろ」

掴んでいた手を離し、緩んだネクタイを直す。
「今日来た転校生と仲がいいらしいな」
なんで知ってるんだよ、と思う。
返事をせずにいると、さっきのように笑った。
「その子も中学の頃不登校だったみたいだな」
「そういうことって、生徒にぺらぺら喋っていいもんなんですか?」
もう一度席に座り、あたしを見る。
「中学がどうだったとか、不登校だった、とか。そういうのって、言っていいんですか?」
先生の顔が曇る。
「中身のない大人は都合が悪いとすぐ黙る」
「これだから、そういうのに呆れたあたしみたいなのが出来上がるんですよ」
「生徒が生徒なら、教師も教師ですからね」
失礼します、と言って会議室を出た。




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