晒し神

先輩

夕方、事情聴取から直帰して、スーパーで夕飯の買い物を終えて、出入り口付近にカートを置いた唯に

「あれ?唯?唯さん?」
と声をかける男性の声が、買い物袋をぶら下げている、唯の動きを止めた

声の主を探す唯の前に

「お~!やっぱり唯だ~!」
と、スーツ姿の男性が微笑んで立っていた

「え?あ~!先輩?北原先輩!」と驚く唯に「ひさしぶりだね~!」とスーツ姿の男性が笑った。

「何?買い物帰り?」
矢継ぎ早に聞かれ、肘にかけた買い物袋を手で撫でるように、少し恥ずかしそうにしなが

「いつもは母に頼んでいるのですけど、風邪で」と、ついつい正直に唯は答えた。

「そうか~、元気にしていた?」と言いながら、片手に持つ自分の買い物カゴを前にだしながら

「オレは夕飯の弁当を買いに着た」とはにかむ笑みを見せた

彼は唯の大学時代の先輩、北原 鋼示だった

「唯は今、何をしているの?あ、主婦か」の問いに

「公務員をしながら子育てをしています」と唯は照れくさそうに答えた

「そうか~、唯がおかあさんか~」とうれしそうな声で言う北原。

「オレは小さな会社で一応社長をしているよ。まぁ夕飯の弁当を買いに来る様な社長だけどな」とカゴをぶらぶらさせて笑った。

「先輩変わらないですね~」の唯の声に

「あ、名刺渡しとくよ」とスーツの内ポケットから名刺を取り出し、唯に手渡すと
「携帯教えてよ」と番号の交換をした。

時計を見て「じゃ~また!今度ゆっくり」と「ポン」と唯の肩を叩き、手を振りながら、スーパーの中に消えていった。

北原は唯にとって、工学部時代当時の、ある意味あこがれの存在だった

それは恋や愛とかではなく、さばさばとして実直でストレートな性格、自分が悪いと思えば、後輩にも頭を下げる、そんな人柄への敬愛であった。





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