水島くん、好きな人はいますか。

大量に出された宿題は早めに消化して、自主勉強に切り替える予定。


今のわたしは仮想模試でA判定を取ることばかり考えている。


「お前、最近おかしくね?」


ミルクティーが来たところで、唐突に瞬が眉を寄せた。


「え? そう?」


思い当たる節はあるけれど頭の隅に追いやっていたせいか、すんなりと言葉が出た。


「勉強のし過ぎか」


と、ひとり納得したらしい瞬に苦笑を洩らす。


「わかんないけど、試験前も試験期間も緊張する」

「自分にプレッシャーかけ過ぎなんだよ。やることやってんのに、バカみてえ」

「瞬くんって相変わらず歯に衣着せぬ物言いだよね。昔はそれでも可愛げあったのに」


お母さんはマグカップに口をつけながら、わたしの隣に腰掛ける。


「寒気がするから“くん”付けやめてほしいんすけど」

「じゃあ瞬。アンタうちにカップ麺置いとくのはいいけどね、多すぎ。3個までにしな」

「すぐ無くなるんすもん」

「育ち盛りがカップ麺ばっか食べるなって言ってんの。万代が作ったご飯あんでしょうが」

「へーへー。わかりましたよ」


言葉とは裏腹に、ばつが悪そうな顔をする瞬はミルクティーを口にする。


ちょっと、喜んでるっぽいな。瞬はあまのじゃくだからなあ……。わかりづらいけど、多めに作った朝食を瞬はぺろりとたいらげたから、お母さんにも伝わったはず。


こんな風に3人で過ごすのはすごく、すごく久しぶり。
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