水島くん、好きな人はいますか。


あの水島くんが、わたしにメール?


ありえない。そんなこと現実であっちゃいけないくらい。


そこまで考えて、ひとつの結論に至った。


誰に覗かれるわけでもないのに悪いことをしている気がして――実際、瞬に知られたら怒られるので――こそこそと隠れるように壁と向き合いながらメールを開く。


≪助けて! また閉じ込められた!≫


タイトルから予想はついていたけど、なにをしてるんだろう。試験では常に3位以内をキープする水島くんだというのに。案外まぬけ?


「えっと、」


≪送信相手を間違えています。≫



歩き出し、ポケットに携帯をしまう直前に水島くんから着信が入る。驚きのあまり目を剥いて辺りを見回す。


そそくさと階段下の物陰に身をひそめ、携帯を耳にあてれば、


『間違えちょらんが! 万代に送ったんじゃろー!?』


と水島くんの少し怒った声がした。


「え、え? そうなんです、か……?」

『一瞬、メアド変わっちょー!?って思った! 事務的な返信すぎて!』

「す、すいません……。あの、じゃあ、先生を呼んでくればいいですか?」

『先生!? いらん! 屋上立ち入り禁止! 怒られるが!』

「え。じゃあ、どうすれば……」

『職員室から屋上の鍵、じってきて』

「じ……って?」
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