水島くん、好きな人はいますか。

なにしてるんだろ、わたし。
水島くんが心配になって来たのに、今日は拒絶されるかもって試すようなことしちゃった。


緊急救助要請なんてメールを疑いもせず、屋上から飛び出してきてくれた水島くんに、どうしたの、元気ないねって訊けもしない。


そんなわたしは、他の子でも同じように焦るのかな、なんて考えている。


きっといつも通りなら水島くんも、『教室戻ろう』って言ってくれるはずなのに。無言のわたしたちは6限目の予鈴が鳴っても動かない。


「授業サボる気かや?」

「水島くんこそ」

「俺はなあ……今さら戻ってもやる気出ん」

「わたしはいつでもやる気だけはあるよ」

「知っちょる」


へこたれていても、いつもやる気だけは失わない。水島くんはそんな風にわたしを見てくれているらしい。


「水島くんは、落ち込んでいても優しさを忘れませんね」


わたしはそんな風に水島くんを見ている。


「なんかや、それ」


瞬とみくるちゃんは別れるのかなって話した放課後、正直ちょっと滅入ってるって言ってたじゃない。


くすりと笑みを零した水島くんは壁に寄りかかり、ずるずる腰の位置を下げていく。


「はあ……泳ぎちょーなー」

「……どうしても泳ぎたいですか」

「ん」短く返事をした水島くんに、ぎゅっと膝を抱いた。


「水島くん」

「うん?」

「今日の放課後、時間をください」

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